日本ガバナンス研究学会
会長 梶川 融
2026年10月
会長挨拶


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 残暑の候、会員の皆様におかれましてはご清祥のこととお慶び申し上げます。今夏は猛暑に加え、各地で豪雨災害も発生し、天候不順の影響の大きさを改めて感じる夏となりました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、私は昨年11月の第18回年次大会において開催された会員総会直後の理事会におきまして、日本ガバナンス研究学会の会長に選任されましたが、それ以来、早くも約1年が経過いたしました。この1年を振り返りますと、企業不祥事や組織の統治不全に関する事案は、残念ながら後を絶ちませんでした。昨年は上期から引き続き、内部統制の不備に起因する不祥事が相次ぎ、海外拠点での不正会計、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反、役員による利益相反行為など、ガバナンス体制の脆弱性が顕在化した事例が多数見られました。こうした問題は、単に一企業の管理体制にとどまるものではなく、企業集団全体の監督のあり方、取締役会の実効性、内部監査・監査役等の機能、さらにはステークホルダーとの対話の質といった、より本質的な課題を私たちに突きつけています。ガバナンスの形式を整えるだけでは十分ではなく、それが実際に機能しているか、企業価値の向上と持続可能性の確保にどのように結びついているかが、これまで以上に厳しく問われていると言えましょう。

 そのような中、本年7月にはコーポレートガバナンス・コードが2021年以来5年ぶりに改訂されました。今回の改訂では、「形式的な対応からの脱却」やガバナンスの「実質化」が強く打ち出され、成長投資の促進、取締役の機能強化、有価証券報告書の定時株主総会前の開示などを柱として、企業価値向上に真に資するガバナンスへの転換が求められています。これは単なる制度改正ではなく、企業が自らの統治のあり方を問い直し、説明責任を果たしながら中長期的な価値創造を実現していくための重要な契機であると考えます。制度と実務、理論と現場の往還を通じて、この改訂の意義と課題を多角的に検討していくことは、まさに本学会に課された重要な使命の一つであります。

 本学会の大きな特色は、何よりも会員の多様性にあります。大学・研究機関に所属する研究者のみならず、会計プロフェッション、法曹界、企業実務家、行政関係者、さらには非営利組織に携わる方々など、多様な立場の会員が集い、知見と経験を持ち寄って議論を深めている点は、他に代えがたい本学会の強みであります。ガバナンスというテーマは、法学、経営学、会計学、監査論、財政学、公共政策、非営利組織論など、複数の領域にまたがる本質的に学際的な課題です。だからこそ、多様な視点を交差させ、相互理解を深めながら、研究と実務の双方の発展を図ることが重要です。こうした営みこそが、本学会の目的であるガバナンス等の研究および実務の振興を通じて、わが国社会の持続的発展に貢献することにつながるものと確信しております。

 今年の第19回年次大会は、統一論題を「監査役制度の課題と展望―監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社との制度間競争の中でガバナンスの一翼を担い続けられるか?―」として開催されます。長年にわたりわが国のコーポレートガバナンスの重要な一翼を担ってきた監査役制度について、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社との比較の中で、その今日的意義、制度的課題、そして今後の展望を検討することは、極めて時宜を得たテーマであると考えております。各制度が企業統治において果たす役割、監督機能の実効性、経営監督と監査の関係など、論点は多岐にわたります。研究者と実務家がそれぞれの立場から議論を交わし、会場参加者の皆様も含めて活発な討論が展開されることを大いに期待しております。

 末尾となりましたが、本年次大会の開催準備にご尽力くださいました専修大学の山�撫G彦委員長、宮川宏委員をはじめとする関係者の皆様に、心から御礼申し上げます。また、本学会の活動を日頃より側面から支えてくださっている事務局の同文舘出版の皆様にも、厚く感謝申し上げます。会員の皆様の積極的なご参加により、第19回年次大会が実り多いものとなることを祈念いたします。